原始反射とは?統合することで可能性が広がる

主に新生児期にみられる反射的な体の動き、原始反射。これらがきちんと出現して、統合(消失)することは人間の脳にとってとても重要なことです。具体的にどんなものがあるのか、気になるあの課題は、どの反射が影響しているのか、チェックリストで確認してみましょう。
原始反射とは?
原始反射は人が成長していくプロセスの中で現れる反射的な身体の動きで、主に胎児期から新生児期にみられます。胎児や新生児では、自分の意志によって身体を動かせるほど、大脳が発達していません。その代り、特に脳の脳幹と呼ばれる部位で人間の本能によって身体を動かしながら、自然に成長、発達をする力をもっています。原始反射は手や足の動き、首の動き、全身を含む動きなど、いくつかの種類があります。
ひとつの原始反射が、また別の原始反射をサポートするように出現し、統合し、最終的には、反射的な動きの世界から、人間が自分の意志で動けるように脳を徐々に発達させていきます。
原始反射が発達、消失(統合する)過程でもたらすこと
- 恐怖に対する反応
- バランス感覚や空間認知能力
- 姿勢維持
- 身体の各部位を連携して動かすこと
- 上半身と下半身の協調
- 左右の協調
など、原始反射は、多くの発達の基礎となるだけでなく、より人間らしい脳の発達として大脳新皮質や辺縁系への発達にも影響しています。
原始反射の種類一覧
原始反射には、いろいろな種類があります。そのいくつかをご紹介します。
モロー反射 Moro Reflex
赤ちゃん誕生の最初の動きがモロー反射としてよく表現されます。
両手両脚を広げ、息を吸い込むようなポーズをして、その後、身体の中心に向かって両手足を縮めるように動きます。
モロー反射は突然の出来事や大きな音、光、頭部の位置変化などが刺激となって、引き起こされます。
恐怖麻痺反射 Fear Paralysis Reflex(FPR)
医学用語にはありませんが、海外の発達障がいのためのメソッドを実践している専門家たちが、この考えをもとにしています。
発達でいうと、原始反射の前の段階、ストレスに対応している反射と考えられています。
把握反射 Palmer Reflex
赤ちゃんの手のひらを触れると、手を握るように指が曲がります。
この原始反射を持ち続けていると、鉛筆を握ることや文字を書くこと、手を使う細かい動作に苦手意識を持つかもしれません。
足底反射 Palmer Reflex
新生児に足の裏に指をおくと、足の指がぎゅっと曲がる反射です。
人間の祖先であるサルを思い出す動きです。また、足の裏の外側を刺激すると足指がクニャっと曲がるバビンスキー反射などがあります。
人間が両足でたち、歩き、足を上手く使う発達の土台となるだけでなく、足を通じた全身のバランスにも影響すると言われています。
スパイナルガラント反射 Spinal Galant Reflex
赤ちゃんはこの動きを使って産道をスムーズにおりてきます。赤ちゃんの背骨の脇をなでると、刺激があった側の腰が動きます。
緊張性迷路反射 Tonic Labyrinthine Reflex (TLR)
この反射は頭の動きに関連して身体が反応します。前庭系などバランス感覚、空間認知能力に影響しています。
真っ直ぐ立つ、歩くための準備を行います。
非対称性緊張性頸反射 Asymmetrical Tonic Neck Reflex(ATNR)
赤ちゃんの頭を左右の一方に向けると、同じ側の腕と足が伸び、反対側の腕と足が曲がる反射です。
この反射は目と手の協調の発達を支え、読書や学習に大きな影響を及ぼす反射のひとつです。
この反射を持ち続けていると、例えば自転車を運転していて、右を向いた瞬間に反対の左腕が曲がることで、バランスに影響し、安定せず、グラグラとします。
また、手だけでなく、下半身も連動して動くため、球技や体操、あらゆる運動やスポーツに深く影響を及ぼします。
対称性緊張性頸反射 Symmetrical Tonic Neck Reflex(STNR)
STNRは四つんばいの姿勢から頭が動くと腕や下半身が連動して動きます。
座る姿勢、立つ姿勢を作るなど、土台となる反射で、この反射を保持していると、猫背や、正しい姿勢を維持し続けるのが難しく感じるかもしれません。
運動では首、背中そして下半身を連携させて使う動き、発達全般において重要です。
首、背中、腰などの筋力やコアの強さ、動かしやすさにも影響します。
いつまでに消失するもの?原始反射の統合とは?
各原始反射は、
反射の動きがみられる(出現)→ 頻繁にこの動きがみられる(発達)→ この動きが消失する(統合)
というプロセスを経過していきます。
それぞれの反射は、現れ、消失する(統合される)時期に違いがあり、多少の個人差はありますが、おおむね以下の時期になります。
反射名 | 消失時期 |
---|---|
モロー反射 | 生後4か月ごろ |
把握反射 | 生後3か月頃には消失し始め、遅くとも5~6か月ごろ |
足底反射 | 生後3か月ごろ |
スパイナルガラント反射 | 生後4~6か月ごろ |
緊張性迷路反射 | 生後4~6か月ごろ |
非対称性緊張性頸反射 | 生後2~3か月ごろ |
※参照:日本小児神経学会小児神経学的検査チャート作成の手引き
しかし、赤ちゃんの時の運動不足や環境要因など、様々な理由が言われていますが、なんらかの原因によって発達プロセスが不十分のまま身体が成長し、原始反射の統合が行われず、発達のプロセスに「ギャップ」が生じてしまうことがあります。
少しであれば、気づかなかったり、気にならかったりする場合もありますが、発達の土台が「グラグラ」することで、その後の学習や運動能力に困難を感じることがあります。
原始反射が統合されていないときに、よく言われる表現として
「姿勢がわるい、背中がくにゃくにゃ曲がっている」
「椅子に座り続けられない、集中力の低下」
「怖がり」
「文字のよみかきが難しい」
「運動神経がない、運動オンチ、苦手」
「上半身の動きと下半身の動きがバラバラしている」
「きれやすい、ショックを受けやすい感情のコントロールが苦手」
などがあります。
心身の様々な反応が、無意識的に生じるため、本人としては、自分でコントロールできないような感覚をもって、ショックをうけたり、あきらめやすくなったり、癇癪をおこしやすくなったりします。
また、周囲から本人の行動が反射を含めてみてもらえるケースが少なく、周りから「なんで、こうなの?」と理解されずに、コミュニケーションで問題を抱えたりすることがあります。
原始反射残存チェックリスト
原始反射の統合がスムーズにできていない場合、下記のようなことを感じたり、課題が観察されたりする場合があります。
モロー反射
- 大きな音、光などの刺激に過敏に反応する
- 衝動的な行動をする、もしくは行動できなくなる
- 落ち着きがない、動き回る、ADHD
- 新しい環境への適応するのが難しい
- 過度の不安・心配が強い
- 集中力の持続が難しい
- 感情のコントロールが難しい
- 対人関係でコミュニケーションの問題を抱えやすい
- 乗り物に酔いやすい
- 運動をしている時のコーディネーションやバランス感覚が得られにくい
- 視野の問題、一つに集中した時に、視界の端にある別の物にも気を奪われやすくなり、集中力の維持が難しくなる
- 免疫能力が下がりやすく疲れやすい
- 自己評価が低くなりやすい
恐怖麻痺反射
- 心配や不安が多く、心的にも肉体的にも疲労しやすい
- 肌、音、視覚的な変化などへの感覚過敏
- ストレスに弱い
- 想定外のことがおきると行動に影響がでやすい
- 息をとめやすい、緊張で身体が固くなりやすい
- 過度に失敗を恐れることが多い
- 自己信頼感、自己肯定感が低い、簡単に「自分はダメ!」と考えがちになる
- 人や対象物と目をあわせないこと、視線が合わないことが多い
把握反射
- 工作、絵をかいたり、字をかくのが苦手
- 微細運動、手先が器用でない
- 鉛筆の握りが強い、ペンや道具の扱いが不器用である
- 文字を書くスピードが遅い、ストレスを感じる
- 手だけを独立させて使うことが難しい
- 道具をにぎって行うスポーツで肩にストレスがかかる、うまくできない
足底反射
- 偏平足になりやすい
- 片方の足だけを捻挫したり、くじいたりを繰り返したりする
- 片足だけ、靴のかかとが減りやすい
- 靴のかかとの部分が内側だけが減ったり、外側だけが減ったりします
- 走るのが遅い
- 縄跳び、ジャンプなどが苦手
- 片足でバランスをとる時にぐらぐらする
- 心身ともにグランディングがしにくい
スパイナルガラント反射
- 脊柱側弯、骨盤の使い方に左右差がある
- 腰痛になりやすい、緊張がある
- 椅子に長くすわっていることが苦手でモゾモゾ動いたりする
- 上半身と下半身の協調が悪い
- 集中力が続きにくい
- 「おもらし」をする時期が長かった
緊張性迷路反射
- 猫背、アタマをまっすぐ立てることができず、カラダの中心軸が安定しない
- バランス感覚が悪く、乗り物酔いしやすい
- 階段を降りるのが苦手、一段抜かしが難しい、降りるときのリズムがつかめない
- 鉄棒の前まわりやマット運動の前転ができない
- 空間認知、奥行きの感覚、速度感覚が鈍くなる
- 黒板の字がみえにくい、文字が飛び出してみえることがある
- ボールを使った運動やスポーツ全般、体育が苦手、全身の協調が低い
- 物事を順序立てたり、まとめて考えたりすることが苦手である
非対称性緊張性頸反射
- 手と目の協調性が低い
- 本や教科書を読むとき、文字の列を読み違えたり、同じ列を2回以上読んだりする
- あらゆる球技を難しいと感じる
- 運動や体育、スポーツをするのが嫌い、苦手
- 正中線をこえる動きが困難、歩く時に同じ側の手と足がでてしまう
- 利き目、利き手が一定しにくい
- 視野の問題、すぐに目が疲れる
対称性緊張性頸反射
- 赤ちゃんのとき、はいはいをあまりしなかった
- 机にむかっているとき、前かがみ姿勢で机にうつぶせになったり、頭を支えたりする
- 黒板をみて、ノートに書き写すのがむずかしい
- 猫背姿勢、注意力が散漫になりやすい
- 背筋を伸ばし続けること、背中の筋緊張が弱い
- 椅子の脚の自分の足をひっかけて座ったりする姿がみられたりします。
いかがでしょうか?
このチェックリストだけで、原始反射が残存している、統合できていないと判断するのは得策ではありません。
また、その各原始反射の残存の有無で考えるよりも各個人の目標に対して統合の状態をみていくことが大切で、実際に動きを確認して、身体に触れることで確認します。
気になっているけれど、自分の意志で、変えにくいようなことがあったり、不器用さで苦労していることがある場合には、原始反射が影響している可能性を視野にいれてみましょう。
楽しく、心地よく、自分に合った方法で可能性を広げていく

原始反射の統合は人生の土台となっている身体の動きに働きかけることで、現在の悩みを改善するだけでなく、自分の強みを発見し、活かしていきながら、人の可能性を広げていくことに役立ちます。
親子で遊びながら、大人の方向けワークショップ、スポーツ選手向けのセミナー形式、個別セッションなど、統合の進め方もご自身にあった形、目的意識をもって進めるのがおすすめです。
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