2019.05.21
セラピストの役割~マーティン・ピストリウスさんについて~
先月開催されましたIFPAアロマセラピストによる症例報告会で、緩和ケアでのアロマセラピーの症例報告をされた畑亜紀子さんの発表の最後に、マーティン・ピストリウス(Martin Pistorius)さんのご紹介がありました。
「脳に障がいを負い、植物状態だと思われていたマーティンさんには、実は10年以上もの間、意識があったのです。
そのことに気付いたのは、一人のアロマセラピストでした。」
私は畑さんのお話を聴いて初めてマーティンさんのことを知ったのですが、感銘を受け、すぐにマーティンさんについて調べてみました。(畑さん、ありがとうございます!)
マーティンさんは、南アフリカのヨハネスブルグ出身とのこと。
南アフリカでは、リフレクソロジーと同様に、アロマセラピーも国家資格。
現地では介護施設にてアロマセラピーが行われているとは、興味深いことですね!
このような自伝も出版されていました!
↓
マーティンさんのことを、簡単に、ご紹介します。
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1975年にヨハネスブルグに生まれたマーティンは、両親、妹弟とともに、何不自由ない生活を送っていました。
12歳の時に、突然風邪のような症状から未知の病にかかり、歩けなくなり、思考能力や記憶力も低下しはじめました。
1年後には、呼び掛けに全く反応しなくなり、完全に意識を失った植物状態だと診断され、意識が戻ることはないだろうと医師に告げられます。
しかし、16歳となったマーティンは、徐々に意識を取り戻し、自分の置かれた状況も理解できるようになっていきました。
でも、彼が意識を取り戻したことに気づく者は、誰もいませんでした。
献身的に面倒を見てくれた父親でさえも、気づかなかったのです。
意識はあり、痛みなどの感覚も感じているのに、自ら動いたり声を発することができない辛さは、私たちの想像を絶するものでしょう。
(このように、意識はあるのに完全に麻痺していて動けない状態のことを「閉じ込め症候群 locked-in syndrome」と言うそうです)
家庭は崩壊し、看病に疲れ果て鬱状態になった母親は、マーティンに、死んでほしいと訴えました。
介護施設では、物のように扱われたり、暴言を吐かれたり、嫌がらせを受けることも多々あったのだそうです。
意識を取り戻してから約10年が過ぎた頃、マーティンは、誰かから気づいてもらう希望どころか、生きる希望も完全に失っていたそうです。
それでも、自ら命を絶つことさえ、叶いません。
そんな頃、介護施設でヴァーナというアロマセラピストが、週に1度マーティンのアロママッサージを担当することになりました。
ヴァーナは、他の人たちとは違い、マーティンの顔をしっかりと見つめながら、話しかけ続けました。
そして、マーティンの顔に、僅かながら、反応があることに気付いたのです。
ヴァーナが両親に強く勧めた結果、マーティンは大学の重度障害者用のコミュニケーションセンターで検査を受け、意識があることが判明しました。
そこから、パソコンを使ったコミュニケーションの訓練と、麻痺した身体のリハビリに励むことになりました。
最初は、額に付けた赤外線で、画面のキーボードをポイントし、コミュニケーションをはかっていましたが、5年後には自分の手でキーボードを打つことができるようになりました。
その後、マーティンは大学に入学し、専門的に情報処理を学びます。
友達もでき、仕事を得て、講演会に呼ばれて同じような境遇の方に力を与えるなど、人生が変わっていきました。
そして、生涯の伴侶となる女性、ジョアナと出逢って英国に移住し、結婚。
現在は、ウェブの開発者、デザイナーとしても活躍しています。
「冗談好きのテクノロジーおたく」と自らを評し、自分で自動車を運転し、スポーツ観戦や映画鑑賞を楽しんでいます。
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書籍は、ジョアナと結婚したところで終わっていますが、なんと、現在ではお子様にも恵まれ、幸せに暮らしていらっしゃいます!
Facebookでフォローさせていただいていますが、可愛らしいベビーとのライフが綴られていますよ。
マーティンさん、本当に素晴らしい方です。
これからもFacebookで応援していきたいと思っています。
こちらのサイトではマーティンさんの講演が聴けますよ。
ここまでマーティンさんを回復させたのは、本人の努力と周りのサポートはもちろんのことですが、「気づいてもらうこと」「声をかけてもらうこと」「気にかけてもらうこと」って、本当に重要なのだと思いました。
コミュニケーションが始まるにつれ、マーティンさんの身体機能も、みるみる回復してきたのですから(もちろん、リハビリの成果もあると思いますが)。
それにしても、アロマセラピストのヴァーナさん、素晴らしい!!!
6月に英国より来日予定のキース・ハント先生も「セラピストとは、施術をする人ではなく、クライアントの心を明るく照らす人」と言っています。
ヴァーナさんは、持ち前のセラピスト精神で、マーティンさんの人生を明るく照らしたのですね!
マーティンさんの自伝を読んで、改めてセラピストの役割を考えるきっかけとなりました。
私もヴァーナさんを見習って、相手がどんな状況であっても、常に目を見て、話しかけて、寄り添っていけるようなセラピストでありたいと思います。
アロマセラピー、リフレクソロジー、ディエンチャンなど、自然療法を学びたい方、是非IMSIオープンキャンパスにいらしてくださいね。