2022.05.21
自閉症とアロマセラピー開催報告
先日、オランダの心理学者、ジョナサン・ベナビデス先生による「自閉症とアロマセラピー」オンラインセミナーが開催されました。
コミュニケーション障がいを専門に、心理士として長年大学病院で勤務していたジョナサン先生は、イギリスのIFPA認定校でアロマセラピーを学び、オランダの心身医療の現場でアロマセラピーを取り入れている第一人者。
これは、私の勝手な憶測なのですが……、アロマセラピーを基礎からしっかり学ぶ教育システムが整っているのはイギリス、「良いものは取り入れよう!」という自由闊達な医療現場で応用された臨床的なアロマセラピーを学ぶのに適しているのはオランダのような気がします。
そんな、「イギリスとオランダの良いとこ取り」のようなジョナサン先生の講座は、毎回私たち日本のアロマセラピストに、良い刺激と感動を与えてくれます。
ジョナサン先生が自閉症を持つ方に取り入れているアロマセラピーは、「リコネクティング(=再び繋がる)」という独自メソッド。これは、「親子、兄弟、祖父母との関係性を取り戻す」という意味が含まれていて、本人だけではなく、家族全体に対するセラピーです。
このセラピーは、まずは、母親から始まります。「生後18か月までは、全く”普通”だった我が子が、自閉症を発症した」という深い悲しみやトラウマを抱えている母親に対して、好きなアロマの香りやベビーソープの香りなど使って、「まだ自閉症を発症していない赤ちゃん時代の幸せな記憶」を呼び覚ますのです。
香りを使う他にも、「アイラブユー」という、足に触れ、指でメッセージの文字を書いていくという手法もあります。母親がこれをすると、それまで喋らなかった子どもが急に「これは好きかも?」「これをするとハッピーになる」など、生まれて初めてポジティブな言葉を発し、母親が涙するという例もよくあるそうです。
心身を癒す「バタフライハグ」というテクニックも伝授されました。胸の前で腕をクロスさせて、両手で胸をトントンするシンプルな動きで、災害後のトラウマケアにも使われています。これは、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)に基づく触覚刺激のテクニックで、ネガティブな感情を促す右脳の暴走を抑え、ポジティブな思考を促す左脳の働きを刺激することで、辛い記憶を手放すのに大変効果があるのだそうです。
心が癒され、母子が繋がる感覚を得てから、さまざまなアロマの香りと共に、次第に父と子、兄弟、祖父母などが繋がっていく「幸せな記憶」を創っていくのです。
さて、自閉症の子どもへのケアですが、一人ひとり、症状やニーズが異なるため、ひとくくりにせずに、まずは注意深く観察することが大切です。
講座では、そっとしておいて欲しいのか、寄り添って慰めて欲しいのかの見分け方や、タッチングが苦手な方への対応など、ジョナサン先生の長年の経験から生み出されたテクニックも盛りだくさんでした。
触れるのがOKなお子さんでも、通常のアロマセラピートリートメントのように、両手で足の甲と足裏を包むような触れ方はできません。このような密着して触れる手法は、一般的なクライアントにとっては心地よく感じられますが、自閉症をお持ちの方にとっては「掴まえられて、逃げられない!」という恐怖心を感じてしまうのです。触れてセラピーを行う場合は、優しく指先のみでサッと撫でる触れ方や、ハーブボールのような道具を使うトリートメントが勧められます。
触れない手法としては、ディフューザー、インへーラー(アロマスティック)、枕スプレーなどが、あり、嗅ぐだけでも良い働きをしてくれるのだそうです。そっとしておいてほしいタイプのお子さんには、好きなぬいぐるみにアロマスプレーで香りを付けるなんていう手法もありました。私も、実は家にある娘のぬいぐるみに、勝手にアロマスプレーをしているのですよ。
「子どもに拒絶されたたら・・・?それは、あなたのせいではありません!散歩して、スパでマッサージを受けましょう!」なんていう保護者向けのアドバイスもあり、ウンウンと共感することばかりでした。
今回のテーマは「自閉症とアロマセラピー」でしたが、実際には、高齢者、認知症をお持ちの方、精神疾患をお持ちの方へのケアなど、自閉症以外のさまざまなシチュエーションに使える手法も多いのです。アロマセラピーの手軽ながら奥深い世界に、たくさんの気づきと発見、感動がありました。
ジョナサン先生の講義には、いつも愛の力が溢れていて、あの笑顔で接してくれたら、どんな頑なな心も緩んでしまいそうです。
ご参加の皆様、ありがとうございました!
次回のジョナサン先生の講座は、イギリスのがん専門病院で発祥したHEARTSというメソッドのプラクティショナー認定コースで、緩和ケア、ターミナルケア、痛みの緩和に使える素晴らしいアロマセラピーです。医療や介護、福祉の現場で役立つアロマセラピーにご興味のある方、ご家族のケアに活かしたい方、海外のメディカルアロマセラピーにご興味のある方、必見のコースですよ!