2022.05.25
緩和ケアとアロマセラピー
「緩和ケア病棟におけるアロマセラピスト」、これはIMSIで発達障がいに関する講座を多く開催してくださっているオランダの心理学者ジョナサン先生のもう一つの顔です。世界中で講演活動を行っている多忙なジョナサン先生ですが、患者さんから「痛みが辛いから来てほしい」と電話があれば、夜中でもすぐにアロマを用意して駆け付けるのだそうです。
発達障がいを持つ方のケアと緩和ケア……。全く違う分野のように見えますが、実は共通点があります。それは「孤独な人を癒すこと」だそうです。
痛みには、炎症性の痛み、腫瘍の痛み、神経痛、手術や生検、化学療法など治療や検査に伴う痛み、褥瘡などの痛みや、精神・スピリチュアルといった身体以外の痛みなど、さまざまな種類がありますが、痛みを抱えるということは、他人から理解や共感してもらうことが難しく、一人で抱え込み、塞ぎ込むことも多い、とても孤独な状態なのです。
でも、ジョナサン先生は、アロマとタッチ、そして言葉の力によって痛みを和らげ、時には痛みをスッカリ忘れさせることができるのだそうです。HEARTS(ハーツ)と呼ばれるテクニックを使うことで!
HEARETS(ハーツ)とは、イギリス・マンチェスターで100年以上の歴史を持つヨーロッパ最大のがん専門病院・クリスティーホスピタルで、患者さんの痛みの緩和のために開発され、発展したテクニックです。
患者さんの痛みの緩和のためにモルヒネなど鎮痛剤を多く投与すると、思考までボンヤリしてしまい、会話をすることが難しくなってしまいます。緩和ケア病棟では、HEARTS(ハーツ)を使うことで、モルヒネの投与量が抑えられ、患者さんが安定した思考で会話をして良い時間をすごすサポートができるのだそうです。
HEARTS(ハーツ)とは、「Hands on 手で触れる」「Empathy 共感」「Aromas アロマ」「Relaxation リラックス」「Textures 触感」「Sound 音」の頭文字を取った言葉で、これらの要素を組み合わせたユニークな痛みの緩和法です。赤ちゃんからシニアまで、服を着たまま、相手が寝ていても座っていても、どの体勢でも行えるのが魅力です。禁忌がなく、従来のマッサージやアロマトリートメントができない方にも適応します。
「セラピストはクリエイティブであれ!」と言うのはジョナサン先生の名言ですが、このテクニックは、とにかくクリエイティブ。手技は決まったルーティンがなく、予測できないランダムな動きが、痛みから気を紛らわせることにつながります。相手が好む香りは、お花やハーブの芳香とは限らないため、「この精油が良い!」と決めつけることはせず、精油以外の香りを使うこともあるのです。
シンプルだからこそ奥深いセラピーで、セラピストには深い洞察力と想像力、クリエイティビティが必要なのです。
イギリスでがん患者さんのために開発されたこのHEARTS(ハーツ)テクニックは、現在では、あらゆる世代の、あらゆる種類の痛みに活用され、その効果が確認されています。
心理学者であるジョナサン先生は、このアロマセラピー&タッチングのテクニックにイメージ誘導法など独特の工夫を加え、更に発展させています。HEARTS(ハーツ)を施すことで、セラピストは患者さんが単に痛みを忘れるだけでなく、心を開放し、愛を感じ、自分の人生を祝福し、人生を謳歌することをサポートするのです。
8月1日(月)より開講するジョナサン先生によるオンラインセミナー「医療・介護に役立つアロマセラピーと痛みの緩和ケア」では、禁忌がなく、安全性が高い緩和ケアであるHEARTSテクニックを学び、プラクティショナー認定資格を取得することが可能です。
医療従事者や医療の中で活動しているセラピストにとっては、すぐに現場で活用することが可能なシンプルで効果的なケアです。アロマセラピストの方は、香りを使った痛みの緩和ケア方法を知ることで、さまざまなクライアントに活用でき、活動の幅が広がります。アロマセラピーの初心者でも参加可能で、ご家族のケアを行っている方は、その日からすぐに取り入れることができるテクニックが満載です。
1年に1度のチャンス。録画視聴も可能ですので、気になる方は、是非この機会にご受講くださいね。