2023.06.26
医療従事者ではないセラピストが病院で働くこと
報告が少し遅くなりましたが、今月、マルタ在住のアロマセラピスト、マリカ先生による「がんケアとアロマセラピー」のオンラインセミナーが開催されました。
「愛に不可能はない!」をモットーに、クリエイティブなアイディア満載の方法で患者さんにアロマセラピーを届け続けるマリカ先生の活動や、実際に使った精油のレシピ、症例など、アロマセラピストとして学ぶことが盛りだくさんでした。
「がんケアの現場で提供されるアロマセラピー」がテーマのこのセミナーでしたが、実は、「裏テーマ」がありました。それは、「医療従事者ではないセラピストが病院で働くこと」です。
イギリスのように、医療にアロマセラピーが組み込まれている訳ではなく、アロマセラピーが補完療法と位置付けられている訳もはないマルタ共和国では、アロマと言えば、リラクセーションやビューティーセラピーという位置付けでした。
マリカ先生も、クライアントをキレイにして、リラックスしていただくためにアロマトリートメントを提供する毎日だったそうです。
ある日、アイルランドで開催された植物療法カンファレンスに参加したマリカ先生は、初めて精油が医療に活用される事例を聞きました。
かつては医師を目指していたマリカ先生は、医療現場でのアロマセラピーが気になり、調べ始めた2週間後に、知り合いの医師から電話がかかってきて「病棟でアロマセラピーをしてくれないか」と頼まれたのです。
こうして、月に1回の病院ボランティアが始まりました。最初は患者にどうやって触れてよいかも分からず、試行錯誤でしたが、次第に患者にアロマセラピーやフェイシャルなどを提供するようになり、病院を訪れる頻度が増えていきました。
更なる転機が訪れました。
2015年に当時のマルタ共和国大統領が、国内に複数あったがんセンターをまとめた国立がんプラットフォームを設立すると発表し、マリカ先生はそのコーディネーターを依頼されたのです。マリカ先生はボランティアとして、その組織ために全力で働きました。
後に国立がんプラットフォームの建て替えをきっかけに、マリカ先生はオフィスマネージャーに抜擢されました。長年ボランティアとして信頼を得ていたマリカ先生は、遂に病院職員の仕事を得ることになったのです。オフィスマネージャーの職のオファーに、マリカ先生は「もちろん、やります!ですが、私は精油を持参していきますよ!」と答え、「私は将来的には病院の中でアロマをやりますよ」ということをほのめかしたのだそうです。
マリカ先生は、病院の相談窓口業務をこなしながら、患者が「部屋にテレビが欲しい」と言えば、テレビを調達するために走り回り、患者が「外を散歩したい」と言えば、敷地内にガーデンを創るよう掛け合いました。
そして自ら「病院には補完療法が必要だ!」と提言し、院内でアロマセラピー、リフレクソロジー、マッサージ、瞑想などの補完療法サービスを始めました。病院のオフィスマネージャーとして、遂に本格的な補完療法のサービスを導入することに成功したのです!
最初はボランティアとして、それが認められて病院オフィスの仕事を手に入れ、それがまた認められて、自分で補完療法サービスを導入……というのが、マリカ先生のストーリーです。
アロマが大好きで、患者さんの役に立ちたい一心で、全力投球し続けた結果、病院で仕事としてアロマセラピーを提供するようになったマリカ先生の姿は、日本のアロマセラピストにとって学ぶことが多くありますね。
もちろん、病院にアロマを導入したからといって、その後も順風満帆だった訳ではありません。
「アロマセラピーはプラセボだ!」と言われることや、補完療法に見向きもしない医師たちも少なくなかったそうです。
しかし数年後には、がん専門医から「患者にやって欲しい」と依頼されるようになったそうです。セラピーを受けた患者の表情を見たり、症状が緩和された患者の声を聞いたりして、医師たちのセラピストを見る目が少しずつ変わってきたのだそうですよ。
マリカ先生は、「愛を持ってやり続ければ、きっと伝わる」と信じています。私たち日本のアロマセラピストも、希望を持って進み続けましょう~!
マリカ先生の「がんケアとアロマセラピー」は、7/4まで録画視聴受付けています。
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